研究者インタビュー

石川 明子

石川 明子

食品開発研究所
チーズ研究室

新しい風景や知識を教えてくれた女性研究者に憧れて

子供のころから食品に興味があり、料理雑誌をよく読んでいました。その中に、飲料メーカーの女性研究者の方がワインについて執筆された記事がありました。ワインそのものの普及を目的とした記事で、ブドウの栽培からワインの作り方、飲み方などが紹介されていました。特に、海外の華やかな食卓風景が、子供心にとても魅力的に感じられました。知識豊かで自分の知らない風景を知っているその女性研究者の方に憧れて「私も大人になったら、食品の会社で、あの人のようになりたい」と思ったのが、研究者になる最初のきっかけだったと思います。

大学卒業後、フランスへ
本場のチーズ愛に触れた経験

大学では、農学研究科で畜産学を専攻しました。畜産食品化学、特に乳製品の製造を学んでいました。生乳中の微生物と乳たんぱく質の相互作用や、それが発酵乳製品の製造に及ぼす影響などの研究ですね。種類の異なる乳酸菌を使用したり、一般的な工程とは異なる方法でチーズを作ったり、その風味成分や食感などの物性の特長を比較、分析していました。
大学卒業後は、フランスに留学しました。乳製品が好きで、理論的に勉強したいと思い、決意したんです。国立の乳製品の専門学校で、チーズ製造の理論を学び、実習で色々なチーズを作りました。また、現地の市場や人々のチーズとの関わり方を知るために、チーズ専門店で研修を行うなど、2年ほど滞在しました。フランスでは「一つの村に一つのチーズあり」という言葉があるほど、たくさんの種類のチーズがあり、それぞれの地域に根付いています。皆、地元愛があって、地元のチーズを愛していたことが印象的でした。フランスで本場のチーズ愛に触れたことは貴重な経験でした。帰国後、当社に入社し、現在は、食品開発研究所・チーズ研究室でナチュラルチーズの研究開発を担当しています。

石川 明子

独自の魅力ある商品を生み出すための基礎的な技術と
将来を見据えた新技術の研究

私の所属するチーズ研究室は「プロセスチーズ」や「ナチュラルチーズ」の新商品開発が主な役割です。森永乳業独自の魅力ある商品を開発するために、基礎的な技術や、将来を見据えた新技術の研究などに取り組んでいます。
私が担当している《クラフト フレッシュモッツァレラ》は1998年に業務用商品として発売されました。当初は、ほぼ手作業で、1日に数十キロ程度を製造していました。そこでしっかりと手応えを感じ、翌年1999年に一般のお客さまに向けても発売されるようになりました。以降、安定供給のための生産プロセスの改良や、おいしさを出来るだけ長く保つための研究、やわらかい食感への更なるリニューアルなどを続け、現在では発売当時とは比較にならない規模の設備で製造しています。

モッツアレラ

2018年には、ひとくちサイズの《クラフト ひとくちフレッシュモッツァレラ》を発売しました。
従来、モッツァレラチーズはお店で食べるものというイメージが強く、家庭での使用はハードルが高いと思われていた面がありましたが、《クラフト ひとくちフレッシュモッツァレラ》は一粒が小さく、切らずに使える手軽さから、サラダにそのままトッピングするなど日常シーンの活用が進みました。初めてご家庭でフレッシュモッツァレラを食べるユーザーの獲得にも寄与し購入率が増加、市場拡大にも大きく貢献しています。現在では当社の2商品が、モッツァレラチーズ市場の約6割を占めるまでに成長しました。※

※出典:インテージSRI+ フレッシュモッツァレラ市場 2020年4月-2021年3月 累計販売金額

より質が高く、おいしい
モッツァレラチーズを目指して

モッツァレラチーズはナチュラルチーズの中でもおいしさを長く保つことが難しいフレッシュチーズですが、当社の商品は保存料を使用せずに、比較的長い賞味期限を設定しています。そのために、原料である“乳”の扱い、製造環境や設備の管理、包材や流通方法の改善などを継続して実施しています。
賞味期限を長くすることは、食品ロスの削減につながりますし、お客さまにも手に取っていただきやすくなると考えています。また、海外への輸出の可能性も広がり、貴重な“乳”の価値向上につながると期待しています。

国産ナチュラルチーズを通して
新たな食シーンを提案していきたい

ナチュラルチーズの主原料はもちろん、牛乳です。私たちは酪農家の方々に生産していただいた、大切な“乳”の価値を最大限に引き出すことが、第一のミッションだと考えています。食のおいしさや楽しさ、質の高い栄養を提供し、皆さまの健康を支えること、そして、安全な商品を開発することで、お客さまへ毎日の安心をお届けすること、それが私たちの役割です。

石川 明子
シュバリエのメダルと叙任証書

また、日本でのチーズ消費量の伸長にも貢献したいと考えています。チーズの国内消費量は毎年増加し、記録を更新し続けているとは言われていますが、欧米と比べるとまだ“嗜好品”というイメージが強いですよね。《クラフト フレッシュモッツァレラ》に続く、国産のナチュラルチーズを手ごろな価格で提供していくことで、新たな食シーンを提案していきたいです。そして、個人的にも「フランスチーズ鑑評騎士の会※」から頂いたシュヴァリエの称号を活かし、当社の商品に限らず、ナチュラルチーズ全般の魅力を、技術者の視点も交えながら発信し、“チーズのある日常”の普及に貢献したいと思っています。

※「フランスの伝統的チーズの生産」という遺産を守るため、また製造・販売に携わる方々への支援を目的とした組織。「シュヴァリエ(鑑評騎士)」はヨーロッパの食文化に精通し、著名な活動や食文化の普及に功績のある者、或いは一定の知識や技能を有する者に対して授与される民間称号。

将来的には、より個々の食品の特定の成分や機能面が注目され、健康志向の高まりは継続が予想されますが、乳製品はまさにその期待に応えられると思っています。乳児からシニアの方々まで、幅広い年齢層のお客さまのニーズを把握すること、そして、何よりも心の栄養である「おいしいもの」を通して、健康的で豊かな生活の実現と、お客さまのかがやく“笑顔”に貢献していきたいですね。

石川 明子

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