
森永乳業のDX
トップメッセージ
森永乳業グループでは、2019年策定の「森永乳業グループ10年ビジョン」の達成に向け、経営基盤を一層強化するため、デジタル技術の活用、DX(Digital Transformation)の取り組みを進めています。
デジタル技術の活用により業務プロセスを自動化・効率化、無駄を徹底的に排除して「コスト構造改革」を図るとともに、お客さまの意識・行動に関わる膨大なデータから潜在ニーズを捉え、商品開発に活かすことで「顧客価値の向上」を実現します。
同時に、これらの成功体験を通じて「攻め」の姿勢を強化し、より一層のチャレンジを目指す組織風土を醸成していきます。多様な価値観を持つすべての社員が、やりがいや誇りを感じながら活き活きと活躍できる会社、職場へと変革して参ります。
このページの上部にある画像は、DXに対して期待するイメージを具現化したものです。これは知的財産権を考慮したAIによって生成したもので、目指す姿を視覚的に表現しました。
森永乳業におけるDXとは
森永乳業グループでは、DXを「当社グループが競争力を向上させるために行う、デジタル技術を使った変革」とし、これを満たせば、ビジネスモデル・業務プロセス・働き方・意思決定の仕方・組織風土等、あらゆるものが該当すると定義しました。当社グループがDXを推進する意義は以下の2点です。
● 挑戦し続ける組織風土を醸成する
デジタル技術の活用は、生産性の大幅向上を実現するだけでなく、社員一人ひとりがその個性や能力を発揮する可能性の拡大をもたらします。
多様な人財の特性も生かした成功体験や失敗からの学びを通じ、当社グループ全体で新たな課題や困難な課題へのチャレンジを促す組織風土を醸成していきます。
● お客さまの健康で幸せな生活に貢献する
当社グループならではの「おいしさ・楽しさ」と「健康・栄養」を両立した価値をお客さまに認めていただくには、多様化するお客さまの姿を正しく理解し続ける必要があります。
これまでに当社グループが培った知識、経験に加え、社内外に散在するデータやデジタル技術を有効活用することで、お客さまの理解を深め、お客さまの健康で幸せな生活を応援して参ります。
DXの計画概要
特に2026年3月期までは、業務プロセスの自動化・効率化による生産性向上に重点的に取り組みます。また、社内外に散在するデータを集約、統合、分析する基盤を構築して業務改革を進め、2029年3月期までに「データに基づく意思決定ができる会社への変革」を目指して参ります。
DXロードマップ概要

取り組み事例
● データ活用によるお客さま理解とコミュニケーションの高度化
お客さま一人ひとりのニーズをより深く捉えるために、「CDP(Customer Data Platform)」を活用し、オンライン上でお客さまと当社が接点を持った際のデータの集約・分析に取り組んでいます。
その取り組みの一例として、森永乳業公式LINEとCDPを連携させることで、公式LINEでお友だち登録をしているお客さまの関心や行動を分析し、最適な情報を最適なタイミングでLINEメッセージをお届けできる仕組みを構築しました。今後もデータを活用した取り組みを通じて、お客さま一人ひとりと向き合い、当社ならではの新しい価値を提供してまいります。
● 財務会計業務のデジタル化
社会環境の変化に伴う経営課題の解決に向けて、財務会計業務のスリム化とデジタル化を進めています。紙を前提とした業務から脱却し、業務の標準化と合理化を図ることで、ガバナンスの強化を目指しています。その一環として、森永乳業株式会社は、2024年10月1日より請求書デジタル送受信サービス「HUEデジタルインボイス」を導入いたしました。「HUEデジタルインボイス」は、紙の請求書に代わる電子請求書システムであり、請求業務の効率化、コスト削減、および環境負荷の軽減を目的としています。これにより、お取引先様とのビジネスプロセスがより迅速かつ円滑に進むことを期待しています。
森永乳業の受領請求書ペーパーレス化
● 生産現場におけるデジタル活用
生産効率の向上を目指した森永スマートファクトリーパッケージ構想を策定し、製造現場における全帳票の電子化、稼働状況の可視化、予知保全などのテーマに取り組んでいます。全帳票の電子化では、2025年6月時点で5工場において電子化ソリューションを展開中です。その他の一部のテーマはシステム構築に着手しており、製造設備から収集したデータを活用・分析できる基盤を整えています。スピード感を持って展開するために各工場にDX推進担当者を配置し、導入事例を工場間で共有することで、効率化・省人化を加速させていきます。
● 原材料価格変動シミュレーション高度化
原材料の高騰や価格変動が製品原価や経営に与える影響を早期に把握するため、計画系プラットフォー「Anaplan」を用いたシステムを富士通株式会社と共同開発し、2024年8月より運用を開始いたしました。このシステムは、環境変化や社会情勢などの要因による原材料の価格変動が事業損益や経営に与える影響、さらに為替変動などのさまざまな状況を想定したシミュレーションができるもので、従来人手で行っていた情報収集・集計作業を効率化し、原材料の価格変動に起因する影響の早期可視化を実現します。
森永乳業と富士通、原材料の価格変動に起因する経営への影響などをシミュレーション可能なシステムを開発
● AIを活用したアイスの需要予測
アイスの需要予測精度を向上させ、迅速かつ正確な判断を可能にすることを目的に、AI技術を活用した取り組みを進めています。2024年10月から2025年3月の約6カ月間にわたる実証実験で有効性を確認できたため、ピノ、PARM、MOWなどの定番フレーバーについては、2025年4月からAIによる需要予測に切り替えました。これにより、各事業所で行っていた対象製品の需給用販売計画を本社に集約し、需要予測業務の工数が2024年3月期と比較して約80%削減される見込みです。
一方、市場のニーズやマーケティングの影響などの要因を組み合わせた限定品や新製品の需要予測は、難易度の高い取り組みとなりますが、実運用に向けてシステムを構築しています。
● 生成AIの活用
情報漏洩や著作権侵害などのセキュリティおよびコンプライアンスリスクに配慮した、当社グループ専用の生成AI「MORIMILK-GPT」の利用者数は、2024年4月時点と比較して約1.5倍に増加し、2025年3月末時点で当社グループでの利用人数は約2,000名に達しました。今後、さらなる効率化を目指し、2025年6月には森永乳業株式会社の全従業員である約3,300名に「MORIMILK-GPT」のアカウントを付与しました。さらに、Microsoft 365 Copilotの導入により、業務の生産性を高める取り組みを進めています。加えて、自律的に業務を支援するAIエージェントの導入も予定しており、各部門の業務効率化や意思決定支援への応用を視野に入れた検討を進めています。
また、RAG(検索拡張生成)を用いた生成AIと社内データの活用により、効率化ツールの構築を進めています。製造現場の過去のトラブルシューティングの知見をデータ/ナレッジ化し、技術の継承やトラブル解決の精度とスピードの向上を目指すツールや、人事労務に関する社内規程などの社内ルールを検索できるツールを構築しています。
● データ活用基盤の構築
社内外に散在するデータを統合し、誰もがいつでも自由にデータを分析・活用できる環境の整備を進めています。これにより、「KKD(経験・勘・度胸)」による属人的な判断から脱却し、データに基づく意思決定ができる企業文化への変革を追求しています。
データ活用の実効性を高めるため、2024年度はマーケティングリサーチ、自社EC、経理といった複数の業務領域においてPoC(概念実証)を開始しました。マーケティングリサーチでは、消費者購買分析を柔軟かつタイムリーに行うことで、より的確なマーケティング戦略の立案へ繋げることを目指しています。自社EC領域では、LTV(顧客生涯価値)の算出自動化により、施策の効果判定の頻度と精度を向上させ、より精緻な施策立案を目指しています。経理領域では、伝票承認後の事後確認業務に必要な資料作成業務に活用し、ガバナンスの強化と業務効率化を図ります。これらの取り組みを通じて、データに基づく意思決定の促進を加速させてまいります。
推進体制とDX人財育成
当社グループでは、DXを一層加速するために、2024年4月にIT改革推進部内に「DX推進グループ」を新設しました。これに加え、事業部門の課題に迅速に対応するため、社内公募を含めた事業部門からIT部門への異動を増やし、IT部門の正規社員を2026年3月期までに28%増員(2024年3月期比)する計画です。
また、データやデジタル技術を活用できる人財の育成も優先順位の高い取り組みです。
デジタル技術を活用して変革を行える人財を育成するため、グループ全社員を対象とした教育プログラム「森永DXアカデミー」を2024年に開講しました。一部のレベルは計画未達となりましたが、研修の機会やカリキュラムを拡充し、デジタル技術を活用して変革を実現できる人財の育成を図ります。
DX人財育成プログラム「森永DXアカデミー」

情報セキュリティ強化に向けた取組み
当社グループでは、情報セキュリティの強化を目的として、2024年4月にIT改革推進部内に「サイバーセキュリティグループ」を新設しました。情報セキュリティ体制としては、社長を委員長とする内部統制委員会を組織し、その下部組織として「情報セキュリティ部会」を設置しています。情報セキュリティ部会では、確実な情報セキュリティ対策を行うための対策案を立案し、実行とその効果の確認をしています。さらに、インシデント発生時に、事態の把握と社内外への対応をより迅速、的確に行うための体制として、2024年7月にセキュリティ部会の下部組織として「CSIRT(Computer Security Incident Response Team)」を設置し、一般社団
法人日本シーサート協議会にも加盟しました。
2025年度は、グループ全体のセキュリティレベルをさらに高めるため、情報セキュリティ関連予算を前年の約1.75倍に拡充しました。また、セキュリティ基準の見直しや脆弱性対応の強化など、組織体制の強化にも継続的に取り組んでいます。加えて、全従業員を対象とした標的型攻撃メール訓練や情報機器へのウイルス対策の徹底、e-ラーニングやコンプライアンス研修を通じた情報セキュリティ意識の向上にも力を入れています。
コーポレート・ガバナンス
DX推進指標(KPI)
DXを通じて私たちが目指すのは企業価値の向上と「森永乳業グループ10年ビジョン」の達成です。
次の6つの重要指標の達成度を測りながら、DXの取り組みを進めて参ります。
- 1 顧客情報基盤の顧客数
- 2 工数削減率、業務プロセスの短縮率
- 3 IT環境の社員満足度
- 4 森永DXアカデミー認定人数
- 5 IT投資に占める変革成長案件の割合
- 6 経済産業省DX調査スコア
10年ビジョンとDX推進指標の関連性
森永乳業グループ10年ビジョン
(2029年3月期) 数値目標
