かがやく"笑顔"のために森永乳業

2026年07月29日 研究開発

血中アルブミン酸化還元バランスがたんぱく質栄養状態とプレフレイル・
フレイルを繋ぐ指標となる可能性を確認 ~学術雑誌『Clinical Nutrition ESPEN』掲載~

 森永乳業と順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター 消化器内科の浅岡大介教授らは、同センター消化器内科に通院する65歳以上の高齢外来患者を対象に、食事調査・血液検査・身体機能などのデータを解析した横断研究により、高齢者の血中アルブミン酸化還元バランス※1がたんぱく質栄養状態と関連する可能性、ならびにたんぱく質栄養状態とフレイル※2やその前段階であるプレフレイル※3とを繋ぐ指標となる可能性を見出しました。
 今後、血中アルブミン酸化還元バランスは、これらのリスクを早期に捉える新しい指標として、栄養と運動の両面から健康管理に役立つ可能性があると考えられます。
 本研究成果は、学術雑誌『Clinical Nutrition ESPEN』に2026年7月3日に掲載されました。

本研究成果のポイント
・高齢外来患者のプレフレイル・フレイルに該当する割合は健常32.8%、プレフレイル52.5%、フレイル14.7%であった。
・血中栄養指標(血中アルブミン酸化還元バランス、血中アルブミン濃度、総たんぱく質濃度、トランスサイレチン濃度、分岐鎖アミノ酸濃度)のうち、血中アルブミン酸化還元バランスのみがたんぱく質摂取量と有意に関連した。
・血中アルブミン酸化還元バランスはフレイルだけでなく、プレフレイルとも有意に関連しており、早期の栄養状態評価に役立つ可能性が示された。

1.研究の背景・目的
 フレイルは、加齢に伴い心身の活力が低下し、転倒、入院、要介護、死亡などのリスクが高まった状態を指します。その予兆を未然に発見し、栄養管理や運動管理などの介入につなげることは健康寿命の延伸に重要と考えられています。
 一方、アルブミンは血中で最も豊富なたんぱく質であり、その濃度はたんぱく質栄養状態の指標として活用されています。しかし、初期の身体機能の低下やたんぱく質不足を反映しにくいことが課題とされていました。近年、血中アルブミン酸化還元バランスがアルブミン濃度よりもより早期、かつ正確にたんぱく質栄養状態を捉える指標となりうることや、歩行速度や握力といった身体機能を反映する可能性が報告されています。そこで、本研究は消化器内科に通院する高齢患者を対象に、血中アルブミン酸化還元バランスとたんぱく質摂取量およびプレフレイル・フレイルとの関連性を明らかにすることを目的としました。

2.研究方法
 本研究では、消化器内科に通院する65歳以上90歳未満の高齢外来患者377名を対象に、(1)食事調査、(2)血液検査、(3)フレイル・プレフレイル評価を実施し、これらのデータを用いて、統計解析を行いました。フレイルの状態は、改定日本版CHS(改定J-CHS)基準に基づき、健常、プレフレイル、フレイルの3群に分類しました。食事摂取量は簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)によりエネルギー、たんぱく質、炭水化物、脂質の摂取量を評価しました。
 血中たんぱく質栄養指標として、血中アルブミン酸化還元バランス、アルブミン濃度、総たんぱく質濃度、トランスサイレチン濃度、分岐鎖アミノ酸濃度を測定しました。たんぱく質摂取量と血中栄養指標の関連性は重回帰分析を用いて検証しました。プレフレイル・フレイルと血中栄養指標、または栄養素摂取量との関連はロジスティック回帰分析を用いて解析しました。さらに媒介分析※4 により、たんぱく質摂取量とプレフレイル・フレイルの関連が血中アルブミン酸化還元バランスを介するかを検討しました。

3.主な研究結果
①高齢外来患者におけるプレフレイル・フレイルの割合 (図1)
 フレイル分類が可能であった375名のうち、32.8%が健常、52.5%がプレフレイル、14.7%がフレイルに該当していました。

図1

②たんぱく質摂取量とフレイル重症度、および血中栄養指標の関連 (図2)
 たんぱく質摂取量が多い人ほど、フレイルの重症度が低いことが示されました。一方で、炭水化物と脂質の摂取量はフレイルの重症度と有意な関連を示しませんでした(図2-1)

                    (図2-1)【解析①】栄養摂取量とフレイルの重症度の関係性

図2

 血中指標のうち、アルブミン酸化還元バランスのみが、たんぱく質摂取量と有意に関連しました(図2-2)。

                   (図2-2)【解析②】たんぱく質摂取量と血中栄養指標の関係性

図2-2

 血中指標のうち、アルブミン酸化還元バランスのみがプレフレイルと有意に関連しました。またアルブミン酸化還元バランスは、フレイルとも有意に関連した血中指標の一つでした(図2-3)。

                 (図2-3)【解析③】血中栄養指標とプレフレイル・フレイルの関係性

図2-3

 媒介分析※4により、たんぱく質摂取量とプレフレイル・フレイルとの関連の一部は、血中アルブミン酸化還元バランスを介して説明できる可能性が示されました (P = 0.009)(図2-4)。

             (図2-4)【解析④】たんぱく質の摂取と血中栄養指標、およびプレフレイル・フレイルの関係性

図2-4

 これらの結果から、血中アルブミン酸化還元バランスはたんぱく質の栄養状態の指標としてだけではなく、プレフレイルを含むフレイル状態の把握に役立つ可能性が示されました。なお、本研究はある一時点における対象者の食事や血中栄養指標、プレフレイル・フレイルのデータを調査し、それらの関連性を評価する横断研究であり、たんぱく質摂取量や血中アルブミン酸化還元バランスがプレフレイル・フレイルに及ぼす因果関係については、今後さらなる検証が必要です。

今後の展開
 栄養不足や運動不足は、加齢に伴う身体機能や筋肉量の低下に繋がり、転倒や介護が必要になるリスクを高めることが懸念されています。血中アルブミン酸化還元バランスは、これらのリスクを早期に捉える新しい指標として、栄養と運動の両面からの健康管理に役立つ可能性があります。今後は、この指標を活用した健康状態の評価や栄養・運動指導への活用に向けた検討も進めていきます。

<参考>
高齢外来患者の血中アルブミン酸化還元バランスとたんぱく質摂取量およびプレフレイル・フレイルとの関係(イメージ図)

イメージ図

 

用語解説                                                                                               
※1 血中アルブミン酸化還元バランス
 血中のアルブミンは「酸化型」と「還元型」に大別され、総アルブミンにおける還元型アルブミンの割合を「アルブミン酸化還元バランス」と称します。たんぱく質栄養状態が悪化すると、還元型の割合が減少(相対的に酸化型の割合が増加)することが報告されています。
 森永乳業は、たんぱく質の栄養状態を反映する新たな指標として「血中アルブミン酸化還元バランス(総アルブミン量に対する還元型アルブミンの割合)」に関する研究を進めています

※2 フレイル
 加齢に伴い心身の活力が低下し、転倒、入院、要介護、死亡などのリスクが高まった状態を指します。改定J-CHS基準では、体重減少、筋力低下、歩行速度低下、疲労感、身体活動低下の5項目のうち3項目以上に該当する場合にフレイルと判定されます。

※3 プレフレイル
 フレイルには至っていないものの、その前段階にある状態です。改定J-CHS基準では、体重減少、筋力低下、歩行速度低下、疲労感、身体活動低下の5項目のうち1~2項目に該当する場合にプレフレイルと判定されます。

※4 媒介分析
 「入口(原因)」と「出口(結果)」の間に「中継地点(媒介役)」があるとき、出口に至る影響のうち、どのくらいがその仲介役を経由しているのかを調べる統計解析手法です。本研究では、入口を「たんぱく質摂取量」、出口を「プレフレイル・フレイル」、仲介役を「血中アルブミン酸化還元バランス」として、この中継地点の影響の有無と大きさを評価しました。

参考文献
Sakate, S. and Arai, H. The revised Japanese version of the Cardiovascular Health Study criteria (revised J-CHS criteria). Geriatr Gerontol Int. 2020; 20(10): 992-993.

原著論文
本研究は、ヨーロッパ臨床栄養・代謝学会 (European Society for Clinical Nutrition and Metabolism (ESPEN)) が発行するオンラインジャーナル「Clinical Nutrition ESPEN」 誌に2026年7月3日付で公開されました。

タイトル
Association of serum albumin redox state with dietary protein intake and frailty in older adults: A cross-sectional study
タイトル(日本語訳):高齢者における血清アルブミン酸化還元状態と食事性たんぱく質摂取量およびフレイルとの関連:横断的研究

著者
Takuya Shibasaki1, Daisuke Asaoka2,3, Takuya Kamimura1, Hirohiko Nakamura1, Kazuhiro Miyaji1, Toshifumi Ohkusa3,4, Nobuhiro Sato3

著者(日本語表記)
柴崎琢哉1, 浅岡大介2,3, 神村卓也1, 中村浩彦1, 宮地一裕1, 大草敏史3,4, 佐藤信紘3

著者所属
1)森永乳業株式会社 研究本部、2)順天堂大学医学部附属 順天堂東京江東高齢者医療センター 消化器内科、3)順天堂大学大学院医学研究科 腸内フローラ研究講座、4)東京慈恵会医科大学附属柏病院 消化器・肝臓内科
DOI: https://doi.org/10.1016/j.clonesp.2026.103436

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