かがやく"笑顔"のために森永乳業

2026年03月23日 研究開発

「ラクトフェリン」の製造量において世界トップシェア※1の森永乳業

食品成分として世界初※2
ラクトフェリンが「のど」に存在する免疫細胞のリーダー
「プラズマサイトイド樹状細胞」を活性化することを確認 ~科学雑誌『International Journal of Molecular Sciences』掲載~

 森永乳業は、乳タンパク質の一種であるラクトフェリンを60年以上にわたり研究しています。このたび、旭川医科大学(髙原幹教授)との共同研究において、食品成分としては世界で初めて※2、ラクトフェリンが「のど」に存在する免疫細胞のリーダー「プラズマサイトイド樹状細胞」を活性化することを確認しましたのでご報告します。本研究成果は、科学雑誌「International Journal of Molecular Sciences」に 2026年3月6日に掲載されました※3

1.研究背景 
 ラクトフェリンは乳に含まれるタンパク質の一種で、涙液、鼻汁、唾液などの外分泌液にも含まれています。これらの外分泌液に覆われている眼、鼻腔、口腔の粘膜は、絶えず環境中の異物に曝されていることから、ラクトフェリンは粘膜を保護するバリア成分と考えられています。これまでの研究から、ラクトフェリンを経口摂取すると、呼吸器症状や胃腸症状が軽減することが確認されています。また、そのメカニズムとして、ラクトフェリンが消化管粘膜で免疫を調節する可能性が示されています。
 鼻腔や口腔に侵入した異物は鼻咽頭関連リンパ組織(NALT)、腸に侵入した異物は腸管関連リンパ組織(GALT)の免疫細胞により認識されます。また、NALTの免疫細胞は上気道を中心に、GALTの免疫細胞は腸を中心に全身の様々な部位に移行し、異物に対する免疫応答を行います。したがって、NALTやGALTの免疫細胞の活性化は、呼吸器症状や胃腸症状の軽減に寄与する可能性があります。
 ラクトフェリンは、GALTの免疫細胞を活性化することは以前から知られていましたが、NALTの免疫細胞に及ぼす影響は未知でした。そこで今回、NALTの一部で、食品の通り道である「のど」に存在する、口蓋扁桃の免疫細胞に及ぼす影響を評価しました。

画像1

                          【口蓋扁桃(黒丸で囲った部位)】

2.研究方法
 習慣性扁桃炎のため摘出された口蓋扁桃から単核球(免疫細胞の混合物)を調製し、牛乳由来のラクトフェリンと一緒に培養し、各種免疫細胞の活性を評価しました。

3.研究結果
①プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化
 pDCは免疫の司令塔とされ、活性化するとインターフェロン(IFN)-αという免疫物質を産生します。IFN-αは幅広い免疫細胞を活性化することでウイルス感染を抑制します。ラクトフェリンは、口蓋扁桃のpDCの活性指標(HLA-DR、CD86)の発現を高め、IFN-α、B細胞活性化因子(BAFF)の産生を促進しました(図1)。ラクトフェリンはpDCのIFN-αやBAFFの産生を促進することで、口蓋扁桃周辺の免疫細胞を活性化し、呼吸器のウイルス感染を抑制する可能性が考えられます。

図1

                  【図1 ラクトフェリンによる口蓋扁桃のpDCの活性化】*:有意差あり(p<0.05)

②B細胞、キラーT細胞の活性化 
 B細胞は免疫グロブリンA(IgA)という抗体を産生する能力を獲得すると、粘膜に移行してIgAを分泌します。分泌されたIgAは、ウイルスなどの異物が粘膜に付着するのを抑制します。ラクトフェリンは、口蓋扁桃のB細胞のIgA産生を促進しました(図2a)。pDCの産生するIFN-αやBAFFはB細胞を活性化することから、ラクトフェリンはpDCを介してB細胞を活性化し、移行先の上気道粘膜でIgAの分泌を促進し、ウイルス感染を抑制する可能性が考えられます。なお、感染などの刺激は、腎臓を傷害する糖鎖異常IgA(Gd-IgA1)の産生を促進することがあります。しかし、ラクトフェリンは糖鎖異常IgAの産生を抑制したことから(図2b)、品質の良いIgAの産生を促進することが示唆されます。

 また、キラーT細胞はウイルスに感染した細胞を殺傷します。ラクトフェリンは、口蓋扁桃のキラーT細胞の活性指標(CD69)の発現を促進しました(図2c)。pDCの産生するIFN-αはキラーT細胞を活性化することから、ラクトフェリンはpDCを介してキラーT細胞を活性化し、移行先の上気道粘膜でウイルス感染した細胞を殺傷することで、ウイルス感染を抑制する可能性が考えられます。

画像2

             【図2 ラクトフェリンによる口蓋扁桃のB細胞、キラーT細胞の活性化】*:有意差あり(p<0.05)

 以上の結果から、ラクトフェリンは口蓋扁桃のpDC、B細胞、キラーT細胞を活性化することが確認されました。口蓋扁桃が存在する「のど」は、食品成分が希釈や消化されることなく作用できる部位です。しかし、食品成分が「のど」の免疫細胞に及ぼす影響は、これまでほとんど研究されていませんでした。

 本成果は、食品成分が「のど」のプラズマサイトイド樹状細胞を活性化することを確認した世界初の報告です。経口摂取されるラクトフェリンは、腸だけでなく、上流の「のど」から免疫を調節することで、呼吸器や胃腸の健康維持に寄与することが示唆されます。ラクトフェリンが人々の健康にどのように貢献できるのか、引き続き研究を進めてまいります。

画2

             【ラクトフェリンが免疫を調節する推定部位】

<参考情報>
◆ラクトフェリンについて
 ラクトフェリンは牛乳から発見されたタンパク質の一種で、鉄と結合する性質を持つことから鉄由来の薄いピンク色をしています。ヒトにおいては、出産後の間もない時期に分泌される初乳に豊富に含まれています。また、環境中の異物にさらされる眼、鼻、口などの粘膜を覆っている外分泌液(涙液、鼻汁、唾液など)にも存在する生体成分で、生体内の多くの細胞がラクトフェリン受容体を発現しています。

ラクトフェリン

◆森永乳業とラクトフェリンの取り組み 
 ラクトフェリンは牛乳から発見されたタンパク質の一種で、ヒトの乳、特に出産後の間もない時期に分泌される初乳に豊富に含まれています。当社は育児用ミルクの研究開発を進める中、ラクトフェリンに注目し60年以上にわたり研究、製造、食品への応用を進めてまいりました。ラクトフェリンは牛乳(生乳)にも含まれていますが、熱に弱く、抽出が困難といわれていました。しかし、当社ではラクトフェリンを本来の性質を保持したまま高い純度で抽出する技術と、変性しない殺菌技術の開発に成功し、1986 年には世界で初めてラクトフェリン入り乳児用ミルクを発売いたしました。
 現在、世界各地の企業が、ラクトフェリンを様々な食品に配合しています。また、世界各地の研究者がラクトフェリンを様々な側面から精力的に研究しています。こうした研究者との連携を通じて、ラクトフェリンの研究をさらに推進し、人々の健康に貢献してまいります。なお、当社は企業の中では、世界で最も多くラクトフェリンに関する研究論文を発表しています※4

※1 Absolute Reports社 2025年版 当社の子会社、MILEI GmbH(ミライ社)の製造量シェア
※2 2026年3月16日時点で医中誌WEB、PubMedの文献調査において、食品成分による「のど」のプラズマサイトイド樹状細胞の活性化を報告した唯一の論文のため、“世界初”としています(株式会社ナレッジワイヤ社調べ)
※3 「Bovine lactoferrin modulates mononuclear cell activity in human palatine tonsils」 Takumi Yago , Chisane Kujirai, Hirotsugu Oda, Takahiro Inoue, Hisataka Ominato, Risa Wakisaka, Ryosuke Sato, Michihisa Kono, Hidekiyo Yamaki, Kenzo Ohara, Takumi Kumai, Miyuki Tanaka, and Miki Takahara.
Int J Mol Sci. 2026 Mar 6;27(5):2442.
URL: https://www.mdpi.com/1422-0067/27/5/2442
※4 Elsevier社が提供するデータベース「SCOPUS」にて”lactoferrin”で検索(2026年3月16日時点)

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