太りやすさを左右する腸内環境
乳酸菌とは異なるビフィズス菌の働き

健康の大敵として知られる「肥満」。
脂肪が体内に溜まりやすい状態が続くと、高血圧や糖尿病、動脈硬化など、さまざまな生活習慣病のリスクが高まることが知られています。なかでも、胃や腸の周辺に蓄積する内臓脂肪が増えると、身体への影響が大きいことが報告されています。

肥満の原因と「太りやすさ」

 肥満の原因と聞くと、運動不足や食べすぎによって余分なエネルギーが体内に溜まってしまうことを思い浮かべる方も多いかもしれません。使い切れなかったエネルギーが体内で脂肪として蓄えられることは事実ですが、実際にはそれだけが肥満の原因ではありません。たとえば、若い頃と同じ量を食べていても年齢を重ねると太りやすくなったり、同じような食事、運動量でも「太りやすい人」と「太りにくい人」がいたりします。

 この「太りやすさ」の違いには、加齢や筋肉量、遺伝的な体質などの要因に加えて、体内で起きている代謝や吸収の状態も関係しています。そしてこれらの代謝吸収と「腸内環境」との関係が、近年注目されています。

腸内環境が「太りやすさ」に関係している...!

 腸内細菌がつくる代謝物は、脂質代謝やエネルギーの使われ方に関わるとされています。そして腸内細菌を含む腸内環境は、わたしたち一人ひとりで異なります。これが、同じ生活をしていても太りやすさに違いが出る要因の一つです。
 太っている人と太っていない人では腸内細菌のバランスが異なっていることも研究からわかっており、さらに下痢、便秘といった便通の状態と太りやすさとの関連も報告されています。ヒトの腸にはビフィズス菌をはじめとする多くの細菌がすみ、体の調子を支えています。最近の研究によると、肥満の方は腸内細菌のバランスが乱れており、例えばビフィズス菌などの善玉菌や、善玉菌の作る健康に良い物質が少ない傾向が報告されています。
 ビフィズス菌を含む一部の善玉菌は、単に腸内環境を整えるだけでなく、遺伝子の活性状態に関わるなど脂質代謝に関わる体の仕組みとも関係することも報告されています。
 また、腸には、体に有害な物質が体内に入り込むのを防ぐ「腸管バリア」があります。腸内環境が整い、腸のバリア機能が保たれていると、脂肪蓄積の抑制をサポートする可能性があると考えられています。一方、この機能が弱まると、炎症を引き起こす物質が体内に入りやすく、体の中で軽い炎症が続きやすくなります。このような炎症は脂質代謝の乱れにつながり、高血圧や糖尿病、動脈硬化などの生活習慣病を引き起こすこともあると考えられています。
 このように、太りにくい状態へと体質を整えていくうえで、「腸内環境」は大切なポイントのひとつといえるのです。

注目される、ヒトのビフィズス菌※1の脂肪蓄積を抑えるはたらき

 腸内環境を整える善玉菌のうち、ビフィズス菌は肥満の方の腸内環境で少ない傾向があるという研究報告があり、肥満においても重要な役割を果たしていると考えられています。
 ビフィズス菌は、「酢酸」と呼ばれる物質をつくることが知られています。これはビフィズス菌の特性の一つで、乳酸菌は主に乳酸をつくりますが、ビフィズス菌は乳酸に加えて酢酸を多くつくります※2 。酢酸はこれまでの研究から、脂肪細胞にはたらきかけて脂肪の取り込みを抑え、体の中でエネルギーを使いやすくする体の仕組みに作用する可能性が示されています。
 さらに、ヒトの腸にすむ種類のビフィズス菌は、腸のバリア機能を守るはたらきに関わる物質「インドール-3-乳酸 (ILA)」をつくりやすいことも報告されており、炎症を抑える可能性が考えられています。
 また、特定のビフィズス菌には、脂質代謝遺伝子の活性化に関わる物質を産生しやすい特性があることもわかってきました。こうしたビフィズス菌を摂取することは、体内の脂質代謝を整えることにつながる可能性があると考えられます。
 実際に、BMIが高めの方を対象とした臨床試験では、ヒトの腸にすむ種類と同じビフィズス菌を摂取することで、おなかの脂肪(腹部総脂肪、内臓脂肪)が減少したという報告もあります。
 ヒトのビフィズス菌は、腸内環境を通じて、太りにくいカラダづくりを助ける存在として期待されています。

「ビフィズス菌BB536」と「ビフィズス菌MCC1274」が、腸から太りにくいカラダづくりをサポート

ビフィズス菌は現在100種類以上が見つかっており、菌種によって性質やはたらきが異なります。
ビフィズス菌BB536とビフィズス菌MCC1274を含む食品を、BMIが高めな人が16週間摂取したところ、ビフィズス菌を摂取していない人と比べておなかの脂肪(腹部総脂肪、内臓脂肪)の減少が確認されました。

ビフィズス菌はコツコツとることが大切

腸内環境をよりよい状態に保つためのアプローチとして、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌を摂取して腸に届ける「プロバイオティクス」の摂取が提唱されています。ただし、食品から摂取した善玉菌は、腸内にずっと生息するわけではありません。定期的に身体の外に排出されるため、腸内環境の維持には毎日補うことが必要です。

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すこやかな毎日のために、腸から見直そう

年齢を重ねても、心も身体も軽やかに過ごすために。
肥満対策は、短期的なダイエットではなく、日々の習慣と体質づくりが大切です。
食事や運動を基本にしながら、腸内環境にも目を向けること。
その選択肢のひとつとして、ビフィズス菌を毎日の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

吉井クリニック院長 吉井友季子先生

監修医師

京都医療センター
臨床研究センター
予防医学研究室室長 
坂根直樹先生

1989年に自治医科大学医学部卒業後、京都府立医科大学、神戸大学医学部分子疫学分野を経て、2003年に現職。専門は肥満と糖尿病。褐色脂肪組織の基礎研究から、肥満や糖尿病予防の多数の介入研究を実施。最近では、持続血糖測定(CGM)やインスリンポンプなど先進糖尿病デバイス、デジタルツインを用いた糖尿病食事療法の最適化(糖質制限、それとも脂質制限が向いているか)などのAI技術や機械学習を用いた研究に取り組んでいる。楽しくてためになる健康教育や人材育成にも積極的に取り組んでいる。

[参考文献]

  1. [1]日本肥満学会.“肥満と肥満症について“一般社団法人 日本肥満学会ホームページ

    https://www.jasso.or.jp/contents/wod/index.html
  2. [2] 内藤裕二ら、肥満と腸内細菌:腸内環境からみた下部消化管疾患、日本消化器病学会雑誌 2021;118:525―531

    https://doi.org/10.11405/nisshoshi.118.525
  3. [3]腸内細菌学会.”よくある質問“公益財団法人 腸内細菌学会

    https://bifidus-fund.jp/FAQ/FAQ_04.shtml