2018年03月22日 研究開発

~日本農芸化学会 2018年度大会発表内容の報告~

「ビフィズス菌A1(Bifidobacterium breve A1)」が
軽度認知障害が疑われる方の認知機能を改善する可能性


 森永乳業では、これまでの研究により、「ビフィズス菌A1(Bifidobacterium breve A1)」に、アルツハイマー病モデルマウスの認知機能改善作用や、脳内の過剰な免疫反応や炎症を抑える作用があることを確認しております※1。今回、ヒトに対する効果の検証を進めるべく、認知症を発症する前段階である軽度認知障害※2の疑いがある方を対象に「ビフィズス菌A1」を摂取いただく前後比較試験※3を実施したところ、軽度認知障害が疑われる方の認知機能を改善する可能性を確認しました。
これらの研究成果を、日本農芸化学会2018年度大会(2018年3月15日~18日、名古屋市)にて発表いたしましたので以下の通りご報告いたします。


<研究背景と目的>
 近年、腸内細菌と健康が密接に関連していることが明らかとなっており、腸内細菌を含めた腸と脳の機能連関を意味する“脳腸相関”が注目されています。また、これまでに一部のビフィズス菌や乳酸菌の抗不安作用が報告されるなど、プロバイオティクス摂取による脳機能への働きが明らかになっています。
 一方、アルツハイマー病をはじめとした認知症患者は世界的に増加しており、日本の認知症患者数は2012年時点で約462万人、2025年には700万人を超え、65歳以上の高齢者のうち5人に1人が認知症を患う予測が発表されています(2015年、厚生労働省)。認知症は一度発症すると進行を止めたり、回復させる治療が困難であることから、発症を予防するため生活習慣の改善など日々の生活の中で実践できる有効な対策を見出すことが課題となっています。

<研究内容>
■研究方法
・ 対象者 :ミニメンタルステート検査(MMSE)※4にて軽度認知障害の可能性が高いとされた高齢者27名
・ 研究デザイン:前後比較試験
・ 内容 : 2016年12月から2017 年7月にかけて、愛媛県松山市内の整形外科に通院中の方を対象に実施しました。軽度認知障害であると考えられるMMSEスコア22点から26点に該当する被験者に、「ビフィズス菌A1」入りのカプセル(「ビフィズス菌A1」 を100億個含有)を1日2個摂取していただきました。
摂取前及び8週後、16週後、24週後にMMSEによって認知機能評価を行いました。

■研究結果 ~認知機能評価~
 MMSEスコアは、「ビフィズス菌A1」の摂取により、摂取前から、摂取16週後と、24週後のいずれにおい ても経時的に有意な上昇が認められました(図)。

■考察と今後
 以上の研究結果から、「ビフィズス菌A1」の継続摂取により軽度認知障害が疑われる高齢者の認知機能改善効果に関する可能性が示されました。
今後はプラセボ摂取を対照群とした二重盲検試験※5により、「ビフィズス菌A1」の有効性を検証するとともに、エビデンスを積み重ねることにより、食を通じた社会貢献の実現に邁進してまいります。


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※1 「ビフィズス菌A1」を用いたアルツハイマー病モデルマウスの認知機能改善作用について
2017年10月18日に科学雑誌『Scientific Reports』誌に掲載されました。(タイトル:Therapeutic potential of Bifidobacterium breve strain A1 for preventing cognitive impairment in Alzheimer’s disease.)。 なお、本研究内容は、日本農芸化学会2018年度大会のトピックス演題に選出されました。   

※2 軽度認知障害
 健常者と認知症の中間にあたるグレーゾーンの段階で、MCI(Mild Cognitive Impairment)とも呼ばれます。一部の場合を除き認知症は完治出来ませんが、軽度認知障害の段階では適切な治療・予防をすることで回復したり、発症が遅延したりすることがあります。

※3 前後比較試験
 個人または集団を対象にある介入を行ない、介入前と、介入後の2回以上の観察においてどの程度変化したかを比較
する試験。生じた変化が介入によるものなのか、経過を見たものなのかを判定することはできません。

※4 ミニメンタルステート検査(MMSE)
 MMSEは認知機能を比較的簡便に評価できる聞き取り式質問票であり、認知症のスクリーニングや診断の補助として広く活用されており、総スコア30点満点にて評価され、得点が低いほど認知機能障害を有する可能性が高いとされています。本研究では22点から26点を「軽度認知障害の疑いがある方」としました。

※5 プラセボ摂取を対照群とした二重盲検試験
 被検者をランダムに複数の群にわけ、一方に試験物質を、他方にプラセボ(有効成分を含まない物質)を摂取してもらい、治療効果などを比較する試験です。被検者・介入者ともに、どちらがプラセボか分からないように試験を実施し(二重盲検)、評価や解釈に作為が入ることを防ぐ試験デザインであり、バイアスをできるだけ排除した客観的な結果を引き出せると考えられています。


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