CSR報告書2016への第三者意見

サステナビリティ消費者会議 代表 博士(総合政策) 古谷 由紀子氏

サステナビリティ消費者会議 代表博士(総合政策) 古谷 由紀子氏

CSR推進部による体系的な全社レベルのCSRへの期待
CSR推進部の設置はCSRの取り組みを飛躍的に進化させるターニングポイントになると思われます。これまでの社会貢献という枠を超えて、貴グループを取り巻く社会課題の解決に積極的に挑戦をしていってほしいと思います。
そこで次の3つの提案をしたいと思います。第一に、どのような社会課題に取り組むかについて検討をし、重点課題としていく必要があります。社会課題の例として参考になるものに、昨年採択された国連のSDGs(持続可能な開発目標)があります。たとえば、ミライ社新工場建設の際の野生生物の生息環境保護などの例は、陸の資源として目標15に、そこでの工場操業には地域や労働者が存在し、目標8や11が関係します。社会課題と自社の商品プロセスから行うべき課題を照らし合わせて検討する必要があります。第二に、ステークホルダーとの関係構築です。自社のみで取り組み課題を決定するのではなく、貴グループに関わるステークホルダーとともに対話を重ねながら決定していくことを勧めます。たとえば、インドネシア等での地域の人々へ乳製品を届ける取り組みは「栄養インフラを広げる」との姿勢で臨まれており、まさに社会課題の解決としての優れた取り組みですが、地域の人々の声を聞きながら、自社の商品の観点だけではなく、地域の人々のトータルとしての栄養と健康の改善に役立てるよう取り組むことが重要です。第三に、これまでの貴グループの特徴である社員の主体的な取り組みとの相乗効果を期待します。2011 年からのCSRを「自分ごと」にするCSR カフェや「私の仕事とCSR」での発言にも見られるように、社員が主体的にCSR に取り組むという貴グループの特徴を活かしてほしいと思います。たとえばCSR カフェの今後の目標として、各事業所での自主的な「CSRカフェ」をあげていますが、さらに社員がお客さまのみならず関係する多様なステークホルダーと対話し、課題の発見や解決をしていくというプランです。CSR 推進部がこれらを支援していくことによって全社的に総合的な取り組みが加速していくと思われます。

消費者とともに持続可能な社会づくりへの期待
貴グループでは、小学校への出前授業や乳製品体験教室、近隣イベントでの商品提供、工場見学などを通して、消費者と接することが多く、その中には消費者のニーズを聞くだけではなく、食育も含まれていると思われます。ぜひこれらの機会を通して、貴グループの取り組みや商品のよさを伝えるだけではなく、持続可能な社会をつくる消費者を育成することも検討していただければと思います。前述したSDGs の目標12には「持続可能な生産消費形態の確保」があります。企業が持続可能な生産、そして消費者が持続可能な消費をともに実践してこそ、持続可能な社会はつくられていきます。消費者啓発・教育は消費者との多くの接点を持つだけではなくその機会を持つ企業に期待されることのひとつでもあります。

経済人コー円卓会議日本委員会 専務理事兼事務局長 九州大学大学院経済学府 客員教授 石田 寛氏

経済人コー円卓会議日本委員会 専務理事兼事務局長 九州大学大学院経済学府 客員教授 石田 寛氏

来年2017年に創業100周年を迎える森永乳業は、「乳」の力で我々の毎日の生活を支えていくことを再認識し、次の100年を見据えてスタートラインに立ち、「CSRを経営そのもの」と全社的に位置づけて、一人ひとりの社員が日々の活動に根づかせたいという姿勢を評価します。
特に部門横断的にCSR活動を推進するために、2016年6月にCSR推進部を新設されたことです。これまでのCSRの軸足が社会貢献中心から、本業を含めた事業そのものもカバーすることを中期経営計画でコミットし、社長を委員長に据えたCSR委員会を開始しました。大きく森永乳業のCSRが変化し、前進したと受け止めています。その経営としての真剣さが伝わるものとなっています。
私は、CSR委員会を形骸化させないためには、以下3点がとても肝要だと考えます。

① 社内外へのコミュニケーション強化
② CSRの経営マネジメントへの組み込み
③ 社員がCSRを自分ごと化するためのトレーニング

また一人ひとりの社員が日々の活動でCSR活動を実践するには、各人の腹に落ちたものにすることが重要です。理念を見直す「新たな夢共創プロジェクト」に全社員が参画し、全社一丸となり合意形成を大事にする姿勢は、「人」を大事にし、「人」が活躍できる企業の証です。「未来に向かう森永乳業」の力を感じます。
こうした継続的な取り組みを基礎として、今後のグローバル企業としての課題を述べたいと思います。今日、企業がグローバルで事業を展開していく中で、以下の2つのことについてこれまで以上にステークホルダーから強く求められてきています。

1. 人権課題の解決に向けて、国連「ビジネスと人権に関する指導原則(UN Guiding Principles)」に沿った人権デューディリジェンス等の取り組みを行っているか。
2.「 持続可能な開発目標(SDGs)」のゴールに向けて、事業を通じた形で社会的課題の解決に貢献するCSR活動を実践しているか。

今後、アジアへの進出を足掛かりにグローバルに事業展開を計る御社にとっては、地球規模で社会的課題を捉えて、その解決を製品やサービスで提供していくことが、今後のCSR 課題になると捉えています。そのためには、「UN Guiding Principles」や「SDGs」に着目するとともに、G7ドイツ、エルマウサミットの首脳宣言の「責任あるサプライチェーンを推進」する方針に着目することです。これらは、CSRを経営そのものとする御社の方針とは、極めて親和性が高いものです。
また、現状は、御社のCSRコミュニケーションは、日本語のみで行われていますが、今後は、英語での情報発信と、GRI に代表されるグローバルなCSR基準に沿ったレポーティングを検討されることに期待します。
 創業100周年を来年に控え、御社グループがさらに健全なる発展を成し遂げていくためには、サプライチェーンを含めた協力会社とともに、会社のアイデンティティである「新たな夢共創プロジェクト」を実現していくためにも、弊害になるような潜在的リスクを予防する手立ても併せていくことで、CSR経営が実現できると期待しています。

TOP