免疫機能を維持するカギは、規則正しい生活と腸内環境

私たち人間には、感染症から体を守る免疫機能が、生まれながらに備わっています。免疫機能が本来の力を発揮できれば、感染症やその重症化を防ぐことができますが、不規則な生活やストレスが続くと、免疫機能の低下を招いてしまいます。免疫機能と関わりが深い組織を知り、免疫機能を維持する生活習慣を取り入れていきましょう。中でも重要とされる習慣が腸活です。なぜ腸内環境を整えることが重要なのかも解説します。

監修者
プロフィール

橋本真一(はしもと・しんいち)先生
橋本真一(はしもと・しんいち)先生
和歌山県立医科大学 医学部先端医学研究所 分子病態解析研究部 教授
東邦大学薬学部薬学科卒業。薬学博士。主な研究に、「がん微小環境における細胞間相互作用の解明」「ゲノム・オミックス解析を基盤とした悪性腫瘍、炎症免疫組織の病態解明」等がある。

1.免疫機能とは?

免疫機能とは?
免疫とは、私たちの体に備わった、感染症(疫病)から体を守る仕組みのこと。免疫にはウイルスや細菌などの病原体が入ってきた時に、すぐに働いて素早く対処する「自然免疫」と、体内に侵入した病原体の情報を記憶し、病原体に合わせて戦う「獲得(適応)免疫」の2つがあります。

獲得免疫の武器の1つは、病原体(抗原)ごとにぴったり合うようにつくられた抗体です。同じ病原体が再び入ってきた際には、1度目よりも速やかに抗体がつくられるため、早期に攻撃することができるのです。

獲得免疫は自然免疫では排除しきれなかった病原体に、集中攻撃する働きもあります。私たちの体は、免疫の二重のセキュリティ機能によって守られているのです。

2.“免疫力アップ”ってできるの?

免疫力
コロナ禍以降、「免疫力」という言葉を見聞きする機会が増えているのではないでしょうか。免疫は生まれながら体に備わった「システム」であり、その機能は複雑です。簡単にこれを食べたら、またこれを実践したら「免疫力がアップする」とは、医学的にはいえません。

ただし、全身が健康であることが、免疫機能を維持する土台であることは間違いありません。体内で免疫機能と関わりが深い組織には、以下のものがあります。正しい知識を身に付けて、ご自身の健康ケアに役立てましょう。

【免疫機能と関わりが深い組織】

●粘膜
粘膜とは鼻や口、のどなどの、体の内側や開口部を覆う薄い膜のこと。病原体が入ってくると、粘膜のバリア機能が働いて、病原体の体内への侵入を食い止めます。具体的には、粘液を分泌して異物をくるみ、くしゃみやせきなどで外部に排出したり、鼻の奥やのどの気管に生えている線毛(せんもう)で異物を外に送り出したりして、病原体の侵入を防ぎます。粘膜はいわば、感染から身を守る盾。本来の力を発揮するためには、粘膜を健康に保つことが重要です。

●骨髄・胸腺(きょうせん)・脾臓(ひぞう)
ほとんどの免疫細胞は骨髄で生まれます。心臓の上に乗るように存在している胸腺は、キラーT細胞やヘルパーT細胞など、T細胞の仲間が教育される場所です。脾臓はリンパ節と同様に、集まった免疫細胞が病原体と戦う基地のような役割があります。

●扁桃(へんとう)・腸
扁桃は口から入ってくる病原体や食べ物などの異物が最初に通る免疫組織です。扁桃には免疫細胞が集まっており、扁桃で取り込まれた異物の中にウイルスや細菌などの病原体が存在すると、免疫細胞が活性化され、感染を防ぎます。

また、全身の約7割もの免疫細胞が集まっているのが腸です。腸内環境を整えることは、免疫機能の維持につながると考えられています。

●自律神経
自律神経は免疫機能と密接に関連しています。自律神経は自分の意思とは関係なく、呼吸や血液循環、消化、体温、発汗といった体の機能をコントロールする神経です。昼間や緊張・ストレスを感じた時に働く「交感神経」と、夜間やリラックスしている時に働く「副交感神経」の2つがあります。

自律神経
交感神経が優位になると血管が収縮し、血圧が上昇。血流や唾液などの分泌が滞り、免疫機能にも影響します。また、腸は脳とホルモンを介してお互いに情報交換をしています。緊張してお腹が痛くなるのは、不安やストレスを受けた脳から腸に情報が伝えられ、腹痛や下痢、便秘を引き起こすためと考えられています。

お互いに影響を及ぼし合っている脳と腸の関係は「脳腸相関」と呼ばれ、腸を整えることは、自律神経にも良い影響を及ぼします。また、自律神経が整うと腸や全身の健康、ひいては免疫機能の維持につながりますので、自律神経と腸内環境を整える生活を心掛けましょう。

3.免疫機能を維持するには、「規則正しい生活」が基本

ここからは、免疫機能を維持するために毎日実践したい食事法や生活習慣についてご紹介します。

●栄養バランスの取れた食事
食事は免疫機能を維持する土台です。免疫細胞の材料になるたんぱく質、抗酸化作用を持つビタミンC・E、βカロテン、粘膜の健康を保つビタミンAや亜鉛などの栄養素を含む食材を意識してとるようにしましょう。

他にも機能性を有する食品成分として、乳由来のラクトフェリンには免疫機能をサポートする働きがありますし、リンパ球の一種であるNK細胞の活性化が期待できるサポニン、大豆イソフラボン、きのこ類も積極的にとりたい食材です。また、腸内環境を整える食物繊維や発酵食品を、毎日の食事に取り入れるとよいでしょう。

●質のよい睡眠
睡眠は自律神経を整える基本です。寝る直前までスマホを見ていると交感神経を刺激して、睡眠の質を低下させてしまいます。寝る1時間前からスマホは見ない、スマホを寝室に持ち込まないなど、マイルールを作って実践するとよいでしょう。

●適度な運動
ウォーキングなど軽い有酸素運動やストレッチは、血流を良くしてくれます。一方で、負荷の高い運動を過度に行うと、細胞を酸化させる活性酸素が増えてしまい、免疫機能の維持には逆効果になってしまうので気をつけましょう。

●ストレスマネジメント
ストレスは自律神経やホルモンバランスを崩し、免疫にも悪影響が…。ストレスや夜更かしなど不規則な生活が多い現代人は、交感神経が優位になりがちです。日頃の生活の中で、副交感神経を優位にするリラックスタイムをつくりましょう。
ストレスマネジメント
●禁煙・飲酒は適量に
喫煙は血流を滞らせ、免疫細胞の一つである形質細胞が抗体(病原体を攻撃する武器となるタンパク質)を産生する機能を低下させてしまったり、リンパ球を減少させたりするリスクも。さらには、唾液分泌や線毛の働きの低下、ビタミンCの消費など、体に備わっている防御機能の働きを弱めてしまいます。

適量の飲酒はリラックスに役立ちますが、飲み過ぎは交感神経を刺激します。また、アルコールは腸壁に炎症を引き起こして、腸のバリア機能を低下させるため、過度な飲酒は控え、適量を心掛けましょう。

4.全身の約7割の免疫細胞は「腸」にいる。腸内環境を整えよう

免疫機能の維持に欠かせないのが腸活です。なぜなら、免疫細胞の約7割は腸に集まっているからです。その重要性から「腸は最大の免疫器官」とも呼ばれています。

消化管は口から肛門まで1本の管でつながっており、空間的には外界と接しているため、実は“体の外側”にある臓器だといえます。腸は口から入ってくる食べ物を消化吸収しますが、口や鼻から侵入した病原体に常にさらされており、多くの免疫細胞が集まって、外敵が体内に侵入しないように守っているのです。

免疫ケアの要である腸内環境に大きな影響を与えるのが、腸内にすむ腸内細菌です。腸内細菌は免疫細胞を活性化させたり、抗炎症作用のある物質をつくり出したりして免疫細胞を助けます。腸内環境は、腸内細菌のバランスと多様性に大きく影響を受けます。

多種多様な腸内細菌が、バランスよく存在する理想的な状態をつくるには、意識的に腸内環境を整える必要があります。腸を整える「腸活」によって腸内環境が整うと、脳腸相関によって自律神経もおのずと整っていきます。

まとめ

免疫機能を維持するには、「規則正しい生活」と「腸内環境を整えること」が大切です。特に、約7割もの免疫細胞がいる腸を整えるには、日頃の食事や生活習慣に目を向ける必要があるでしょう。免疫に対する正しい理解を深めた上で、免疫機能を高めるケアを、日常の生活の中に取り入れていきましょう。