「免疫」とは? 感染症から体を守る仕組みを解説

免疫とは、私たちの体に備わっている、感染症から体を守るシステムのこと。新型コロナウイルスの流行によって、今まで以上に注目が集まっていますが、免疫システムによって、私たちの体はどのようにして病原体の侵入を防いでいるのでしょうか。免疫の種類や仕組み、働きなどについて分かりやすく解説します。

監修者
プロフィール

橋本真一(はしもと・しんいち)先生
橋本真一(はしもと・しんいち)先生
和歌山県立医科大学 医学部先端医学研究所 分子病態解析研究部 教授
東邦大学薬学部薬学科卒業。薬学博士。主な研究に、「がん微小環境における細胞間相互作用の解明」「ゲノム・オミックス解析を基盤とした悪性腫瘍、炎症免疫組織の病態解明」等がある。

1.免疫とは?

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免疫とは、「疫を免れる」という意味を持つ、感染症(疫病)から体を守る仕組みのこと。体内に侵入してこようとする病原体や毒素、異物と戦い、感染症の発症や重症化を防ぐ重要な役割を担っています。

感染症を引き起こす病原体には、大きく分けて、以下の5種類があります。

➀ウイルス…インフルエンザウイルス、新型コロナウイルス、ノロウイルスなど
➁細菌…コレラ菌、サルモネラ菌、結核菌など
③真菌…白癬菌、カンジダ菌など
➃原虫…マラリアなど
➄寄生虫…アタマジラミなど

これらの病原体から体を守る働きが免疫です。また、外部からの病原体の侵入を防ぐだけではなく、免疫には体内に出来てしまった細胞の異常(エラー)を見つけて、変質した細胞を取り除く働きがあることも分かっています。さらに、免疫細胞が老化した細胞を見つけて除去している可能性が示され、アンチエイジング効果にも注目が集まっています。

2. 私たちの体は3段階のバリアで守られている

3段階のバリア
私たちの体には3段階のバリアがあります。以下の3つのステップで病原体と戦っています。

ステップ1 皮膚
人体のバリア機能の最前線として、体内への病原体の侵入を防いでいるのが皮膚です。外界とじかに接している皮膚の表面は、汗や皮脂などの分泌物によって弱酸性に保たれています。皮膚が皮脂膜に覆われ、弱酸性に保たれているため、病原体は増殖することができません。

ステップ2 粘膜
粘膜とは、鼻や口、のどを始め、体の内側や開口部を覆う薄い膜のことです。粘膜を覆うように分泌される鼻水や唾液などの粘液は、微生物の増殖を抑制する成分を含み、また、侵入しようとする異物を洗い流したり、くるみ込んで、くしゃみやせきなどで排出します。鼻の奥にある「上咽頭(じょういんとう)」や、空気の通り道である「気管」には線毛(せんもう:気道粘膜表面に密生する、極めて細く短い毛)が生えていて、この線毛が異物を外に送り出す重要な働きをしています。

ステップ3 免疫細胞
これら2つのバリアをかいくぐって、体内に入り込んだ病原体に対し、第3のバリアとして、即座に攻撃を始めるのが免疫細胞です。風邪をひくと、のどが赤く腫れたり、せきが出たり、たんや鼻水が増えたりするのは、白血球などの免疫細胞が集まってきて、病原体を攻撃しているためです。

3.免疫細胞の働き

免疫細胞の働き
さらに免疫について詳しく見ていくと、免疫には大きく分けて「自然免疫」と「獲得(適応)免疫」の2つがあります。

●自然免疫
自然免疫とは、私たちの体に生まれつき備わっている防御システムです。病原体が体に入ってきたら、すぐに働いて病原体を攻撃します。自然免疫の代表的な細胞には、マクロファージ、好中球、樹状細胞、NK細胞などがあります。それぞれの特徴を解説しましょう。

・マクロファージと好中球
マクロファージは好中球と共に体内に入ってきた病原体をいち早く見つけ、異物を食べて病原体の繁殖を防ぎます。好中球は病原体を殺す力が強い細胞ですが、マクロファージは病原体を殺すと同時に、食べた病原体の情報を他の免疫細胞に知らせて、T細胞などを呼び寄せます。

・樹状細胞
樹状細胞はマクロファージよりも強力に病原体の情報をキャッチして、他の免疫細胞に伝える働きを担っています。血液や粘膜など、体の至る所に分布していて、異物の情報を集めて他の免疫細胞に伝達し、活性化させます。

・NK細胞
ウイルスなどの異物が入り込み、異常を起こした細胞を丸ごと死滅させるのがNK細胞です。がん化した細胞も標的とし、細胞ごと壊します。

●獲得免疫
獲得免疫とは、一度体に入ってきた病原体の情報を学習し、攻撃する仕組みです。自然免疫が病原体と戦っている間に病原体の情報を得て、準備してから戦います。獲得免疫の代表的な細胞には、T細胞(ヘルパーT細胞・キラーT細胞など)、B細胞(一部は分化して形質細胞に変化する)があります。

まず、前線で病原体と戦ってきたマクロファージや樹状細胞から、異物の存在がT細胞に伝えられると、T細胞の中でも司令官的な役割を担うヘルパーT細胞が始動。受け取った情報を即座に読み取り、効果的な対処法を分析し、キラーT細胞やB細胞に具体的な攻撃指令を出します。

指令を受けたキラーT細胞は、病原体に感染した細胞ごと破壊し、B細胞は分化して形質細胞になり、「抗体」を大量につくって病原体を攻撃します。

T細胞やB細胞は一度体内に入ってきた病原体の情報を記憶するため、再び同じ病原体が侵入してきた際には、記憶した情報(免疫記憶)を使って、すぐに攻撃体制に入ることができます。

【抗体とは?】

抗体とは?
獲得免疫によってつくられる抗体は、B細胞が分化して出来た「形質細胞」によってつくられる「免疫グロブリン」というタンパク質です。病原体を攻撃する武器として、抗原(病原体)ごとにぴったり合う抗体がつくられ、侵入してきた病原体を排除します。

一度体内に侵入した病原体に対して記憶されている免疫が働き、速やかに排除するという獲得免疫の仕組みを利用したのが予防接種です。


ワクチンを接種すると、B細胞が働いて抗体が出来ます。同じ病原体が再び体に侵入すると、1度目よりも速やかに抗体がつくられるので、病原体を早期に排除して、病原体から体を守ってくれるのです。

4.免疫システムは低下しても過剰になっても、病気と関わる

バランス
病気から守ってくれるはずの免疫ですが、バランスが崩れると、様々な病気を招くリスクが高まります。免疫は低下しても過剰になり過ぎても、病気の原因になる点を知っておきましょう。

例えば、免疫機能の低下は風邪やインフルエンザなどの感染リスクを高める他、がんの発症リスクも高めます。

一方、免疫が過剰に働き過ぎると、花粉症やアトピーなどのアレルギー症状の原因となることがあります。花粉などの病原体ではない異物に対して免疫が過剰に反応し、かえって体に害を及ぼしてしまうのです。また、免疫システムの暴走によって引き起こされるものに、関節リウマチや膠原病などの自己免疫疾患があります。免疫システムが自分自身の抗原に対して攻撃をしてしまうため、「自己免疫疾患」と呼ばれています。

5.免疫システムのバランスを崩さないためには

このように免疫システムは複雑なので、「これをしたら免疫力がアップする」といった簡単な解決方法は、残念ながらありません。免疫機能のバランスを維持し、低下させないために重要なのは、日頃の生活習慣を整えて、心身に負荷を掛け過ぎないこと。食事、睡眠、適度な運動、ストレスをためないといった基本的な生活習慣を見直し、規則正しい生活を心掛けることが、免疫機能を維持する第一歩です。

まとめ

免疫は低下しても、過剰になり過ぎても体にとってはよくありません。私たちの体に備わった免疫機能を適切に働かせるためには、土台となる生活習慣がカギとなります。気になることがある方は、ご自身の今の生活習慣を見直し、規則正しい生活にスイッチしていきましょう。