研究開発ストーリー 商品開発

森永乳業の
クリーム開発

生クリームの生産基地としての期待を込めて

酪農の中心・北海道十勝の工場に新たに製造棟を造り、クリームの生産基地を拡充する計画が持ち上がった2011年。翌2012年、クリーム製品の新棟の立ち上げ計画が研究所に届いた。新しいクリーム製品開発の裏には、酪農の本場ならではの苦労があったのだ。

均質条件にこだわり、保存性を高める

北海道ゆえの思わぬ苦労

「北海道・十勝にある森永乳業の関係会社である工場が新棟を造る。新たなクリーム製品を製造する計画を検討せよ」この指示が下ったのが2012年初め。工場では以前から原料用のクリームを製造しており、その品質からみて、十勝地区の生乳が、風味のバランスの良いクリームとなることが判っていた。
しかし、北海道では、その広大な土地柄もあり、地域によって酪農のスタイルが異なる。放牧飼育、牛舎飼育と地域ごとに乳牛の飼育法も飼料も異なり、気象条件の差も大きい。このため、同じホルスタイン種の生乳でも地域ごとに乳質にかなりの違いが生まれ、検討をするには十勝地区の生乳を使わなければならない。これが開発を進める上での壁となったのだ。

製造技術案の試行、そして装置の検証

元々クリームは、生乳からそのままの乳脂肪球を集めてつくられているため、脂肪球の状態を適切にコントロールしないと、輸送中の振動で脂肪球同士がくっ付いてしまい容器の中でホイップされたり、粘度が上がり、ドロドロになることがある。また保存中に軽い脂肪が浮上し上部で塊ができるなど、品質に問題が生じるのだ。
この問題を解決するのが「乳化」という技術だ。開発部門は、クリーム製造に活用する技術案をいくつか試した。乳化には、「均質化」という処理を行うのが一般的だ。この均質化を段階的に行うことで、乳化状態が安定することを見出し、特許も出願した。さらに、充填レイアウトをできるだけシンプルにしてクリームへの泡かみや、物理的な力をかけないことにより、脂肪球へのダメージを回避し乳化状態を保つ。これらの工夫により、クリームの物性が安定し保存性が向上するため、賞味期限を従来より長くできる可能性があることを導き出した。

開発計画がまとまったところで、さっそく、開発に使用する装置の検証に入った。クリームの物性を決めるポイントとなる均質条件には徹底的にこだわり、機械メーカーから乳化機を取り寄せて研究所に移設し、検証を重ねた。殺菌前処理条件についても、乳化性の良化と風味のバランスが最適になるよう幾度となく検証を繰り返した。同時に、業務用に使用する内容量10キロの大型容器についても、衛生レベルを上げて保存性を高めた資材の検証を実施した。

北海道から神奈川まで、多量の生乳を運び検証

次に実際の工場で原料として使用する原料乳によるテストが必要になる。何しろ広い北海道では各地区によって乳質が異なるため、対象地区の乳を使用しなくては正確な検証ができないからだ。そこで北海道の各工場に依頼し、地域ごとに生乳を集めて違いを検証し、想定される集乳地区の乳質の特性を確認していく。

ところが、クリームを1キロつくるのに生乳を約13キロも必要とするため、検証には多量の生乳を用意しなければならない。なおかつ、北海道から神奈川県にある研究所まで生乳を運ぶには大変な苦労があったが、物流部門と協力し、十勝地区から1トンの新鮮な生乳を取り寄せる体制を整えることができた。こうして、ようやく研究所でのクリーム試作にこぎつけ、前述したプランをもとに何度も試作を行い、検証を重ねた。

洋菓子店などで使われるホイップマシーン

新フレッシュクリームの製品化を実現

生産基地完成へのラストステップ

研究所での試作は順調に進んだが、新棟の製造ラインが完成していなかった。これでは実際の製造設備での検証ができない。そこに、たまたま遊休となっていた別の工場の設備を使ってもよいとの温かい申し出があり、その設備を使用して検証を行うことができた。
十勝から原乳を運び入れて実際の製造設備での製造を行い、製造スタート時の条件検討を実施。このような苦労を経てようやくつくり上げることができたクリームは、大口顧客の商談用サンプルにも活用し、取引先からも好感触を引き出すことができた。

2013年2月、待望の新棟での試作がスタート。製造条件の検証を実施しながら、並行して営業部門に試作品の評価を確認の上、さらに条件の検討を続けた。こうして3月下旬に最終的な製造条件が確定し、新しいクリームの製品化が実現したのだ。

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